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徳島地方裁判所 平成4年(行ウ)5号 判決 1995年6月02日

原告 圃山靖助

被告 徳島市長

主文

一  被告が原告に対してした平成二年一〇月二五日付公文書部分公開決定処分のうち、債権者の印影及び振込先並びに購読料及び広告料に関する債権者の住所及び氏名の部分について非公開とした処分を取り消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が原告に対してした平成二年一〇月二五日付公文書部分公開決定処分(ただし、被告の平成四年五月二六日付決定で公開した部分を除く。)を取り消す。

第二事案の概要

本件は、原告が被告に対し、徳島市公文書の公開等に関する条例(徳島市条例第二五号。以下「本件条例」という。)に基づき、平成二年四月一日から同年九月三〇日までの市長交際費の支出命令書等の写しの交付を請求したのに対し、被告が、平成二年一〇月二五日付で原告に対し、事業者名、印影、振込先、個人名等については公開しないこととした処分(ただし、原告の異議申立てにより、支出命令書及び領収書の数量、単位、単価欄等について公開するとした部分を除く。以下「本件処分」という。)の取消しを求めたものである。

(争いのない事実)

一  当事者

1 原告

原告は徳島市民である。

2 被告

被告は本件条例二条二号に定められた公文書公開に関する「実施機関」である。

二  本件処分等

1 原告が、被告に対し、平成二年一〇月一一日、本件条例に基づき市長交際費の支出命令書等(以下「本件公文書」ともいう。)の写しの交付を請求したところ、被告は、同年一〇月二五日、右文書の一部については公開し、その余については本件条例六条二号、三号又は九号に該当するため公開しないこととする公文書部分公開決定をした。これに対し原告が被告に対し、平成二年一一月三〇日、異議申立てをしたところ、被告は、平成四年五月二六日、徳島市公文書公開審査会の答申に基づき右決定によって非公開とされた文書のうちの一部を公開し、その余の部分(以下「本件情報」ともいう。)についての申立てを棄却する旨の決定をした。このように、公開請求された文書、公開・非公開となった情報等は、以下のとおりである。

(一) 公開請求された文書(本件公文書)

平成二年四月一日から同年九月三〇日までの市長交際費の支出年月日、支出先、金額(支出命令書)並びに出席者名、会議の目的及び各件別の明細を示す関係文書(経費支出伺、請求書及び明細書、領収証)

(二) 平成二年一〇月二五日付決定で非公開とされた情報

事業者名、印影、振込先、個人名、単価・数量、品質・形状、債権者コード

(三) 平成四年五月二六日付決定で公開された情報

(1) 支出命令書及び領収書の数量・単位、単価欄

(2) 支出証明書の内容欄

(3) 支出命令書及び領収書の債権者たる事業者名(ただし、懇談の場合の場所を明示することとなるもの及び交際費名目で支払われている購読料を除く。)

(四) 公開されていない情報(本件情報)

(1) 交際相手の氏名

債権者に直接支払う場合の「経費支出伺に係る決裁書」及び「支出命令書(様式第1号)」の記載事項

(2) 債権者の印影

「支出命令書(様式第1号)」及び精算書に添付する「領収書」の記載事項

(3) 債権者の振込先

「支出命令書(様式第1号)」の記載事項

(4) 接客業者で懇談の場所を明示することとなる債権者の住所、氏名

「支出命令書(様式第1号)」及び精算書に添付する「領収書」の記載事項

(5) 購読料、広告料に関する債権者の住所、氏名

精算書に添付する「領収書」の記載事項

2 市長交際費の支出手続

市長交際費の支出手続は、大きく分けて資金前渡による場合と債権者に直接支払う場合とがある。

(一) 資金前渡による場合

見舞い、香典等、支出日時、債権者等が決まっていない場合は資金前渡の方法による。

この場合、経費支出伺に係る決裁書を提出し、決裁が下りると支出命令書の二号様式で資金前渡職員が前渡金額を請求する。資金前渡職員が支出した後は精算書を提出するが、これには、添付書類として領収書が得られるものについては領収書を添付するが、得られないものについては支払証明書を添付する。

(二) 債権者に直接支払う場合

支出日時、債権者等が決まっている場合は債権者に直接支払う方法による。

この場合、経費支出伺に係る決裁書を提出するが、一般の食料費と同じような形で金額を計上する。決裁が下りると、正当債権者から支出命令書一号様式で請求があり、これに対して市から口座振替、若しくは銀行の窓口で支払われる。なお、支出命令書一号様式には債権者の請求書が組み込まれている。

3 本件条例六条の規定

本件条例六条は、「実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、公文書の公開をしないことができる。」とし、各号で次のとおり定めている。

(一) 二号

「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

ア 何人でも法令及び条例の規定により閲覧することができるとされている情報

イ 公表することを目的として作成し、又は取得した情報

ウ 法令及び条例の規定により行われた許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又は取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの」

(二) 三号

「法人(国及び地方公共団体を除く。)その他の団体(以下この号及び次号において「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより当該法人等又は当該事業を営む個人の事業活動上の利益を害することが明らかであると認められるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

ア 人の生命、人体又は健康を保護するため、公開することが必要と認められる情報

イ 違法又は不当な事業活動によって生ずる支障から人の生活を保護するため、公開することが必要と認められる情報

ウ ア又はイに掲げる情報に準ずる情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの」

(三) 九号

「検査、取締り等の計画及び実施細目、入札の予定価格、試験の問題、職員の身分取扱い、交渉及び争訟等の処理方針その他市又は国若しくは他の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は事業の性質上、公開することにより当該事務又は事業の公正又は円滑な執行を著しく困難にするおそれのあるもの」

(争点)

本件の争点は、本件情報が本件条例六号に定められた公開をしないことができる公文書に該当するかどうかである。

一  被告

本件情報は、本件条例六条に定められた公開をしないことができる公文書に該当する。これを詳論すれば、以下のとおりである。

1 交際相手の氏名

(一) 本件条例六条二号は、個人のプライバシーを保護するための規定である。そして、特定の個人が「識別され、または識別され得るもの」とは、当該情報からは直接個人が識別できなくても、他の情報と組み合わせることにより特定個人が識別され得る情報も含まれると解すべきである。

(二) 債権者に直接支払う場合の「経費支出伺に係る決裁書」及び「支出命令書(様式第一号)」に、慶弔に伴う花輪、生花等の贈答先である交際相手としての個人の氏名が記載されているものがある。これは、個人又はその親族の婚姻、死亡等戸籍的事項に関する情報であるから、本件条例六条二号に該当する非公開事項であることは明らかである。

2 債権者の印影、振込先

(一) 本件条例六条三号は、社会の構成員として自由な事業活動が認められている法人等の正当な事業活動上の利益が害されることを防止する観点から、そうした情報について非公開とすることを定めたものである。

(二) 「支出命令書(様式第一号)」には債権者の振込先と印影が、また、精算書に添付する「領収書」には債権者の印影が記載されている。当該事業者に事業上の必要性がない場合、事業上関係のない者にも知らせることによって、事業者に対する営業妨害や印影の偽造等の問題が生じる可能性もあり、またそのような可能性があるという不安感を与えること自体、事業者としての地位に不利益を与え事業活動上の利益を害するものといえる。したがって、事業者の印影や振込先は事業活動上の秘密に属する情報というべきであり、公開することにより事業活動上の利益を害することが明らかな情報に該当するものであるから、本件条例六条三号に該当する。

3 接客業者で懇談の場所を明示することとなる債権者の住所、氏名

(一) 本件条例六条九号は、事務事業の性質上、公開することにより当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は円滑な執行が阻害され、これを公開することによって住民全体の利益が損なわれる結果になることを防止するために設けられたものである。

(二) 「支出命令書(様式第一号)」及び精算書に添付する「領収書」の記載事項には債権者名が記載されているが、右債権者名が接客業者である場合には、市が行う交際事務の舞台となった懇談会合の場所が表わされている。これを公開すれば、他の情報と組み合わせることによって、交際の相手方及びその内容が明らかになるばかりではなく、懇談場所の格等の上下などにより、交際相手方に対する市の評価を知らしめることともなり、その結果前述したような交際事務等の公正又は円滑な実行を著しく困難にするおそれが生じることは明らかである。したがって、接客業者で懇談の場所を明示することとなる債権者の住所、氏名については、本件条例六条九号に該当する。

4 購読料、広告料に関する債権者の住所、氏名

(一) 本件条例六条九号の趣旨は前述のとおりである。

(二) 交際費名目で支払われる購読料は、それ自体一定ではなく、その金額は債権者との交際の濃淡、交際期間、その他市が行う相手方の評価に基づいて決定されるもので、その発行する新聞等で広く市民に市政に対する理解を求める広報活動の一端を期待しての協賛金的性格を有している。他方、購読料の金額については公開されているところであり、債権者名まで公開すると、交際事務の相手方たる個人名等が明らかになり、他社との比較でこれに不満を抱くなど、当該債権者のみならず、他の関係者との間でも信頼関係が損なわれることが十分に考えられる。したがって、購読料に係る領収書の債権者名は、本件条例六条九号に該当する。

二  原告

被告の主張は争う。本件情報は、本件条例六条に定められた公開をしないことができる公文書に該当しない。

1 本件情報は本件条例六条二号に該当しない。

(一) 本件情報は次のとおりプライバシーとして保護されるべきものとはいえない。

(1) 債権者の住所、法人又は個人企業名、懇談の人数、費用内訳等は当然請求書あるいは領収書に明記すべきもので、利用者なら誰にでも手渡す文書である。

(2) 仮に本件公文書を全面公開することにより個人が識別される情報であったとしても、会合の相手方である公務員あるいは当該団体や個人の私生活上の事実を記載したものではないから、個人のプライバシーの侵害につながるものではない。

(3) 市長が慶弔した相手方の氏名は当該個人又は親族が葬儀や披露宴をして自ら公表し、時にはマスコミに掲載されるなどして公開されたものであり、知られたくない事実ではないし、そうでないとしても、公益の方がはるかに大きいから、市長はこれを甘受すべきである。

(二) 被告の本件処分は、保護に値する実質的理由を示すなど処理理由を明確にしないばかりか、公開することの有用性、公益性に目を背けるものである。

2 本件情報は本件条例六条三号に該当しない。

(一) 本件公文書(支出命令書)に記載されるのは、懇談等に使用された飲食店等の場所、名称とその飲食に係る料理等の売上単価及びその合計金額、人数のみであり、右情報が公開されたとしても、それによって特に当該飲食店等を営む法人、個人の競争上の地位が害されるとは考えられない。また、市による利用の事実が明らかになったからといって、その有する正当な利益が害されることはない。

(二) 債権者の振込銀行名、口座名義、口座番号、預金種別、印影は、請求書ないし領収書に印刷したり日常多数の者に交付して受取用の口座を一般顧客に公にしているものである。

3 本件情報は本件条例六条九号に該当しない。

(一) 本件公文書には、折衝の過程、意見及びその対応等の情報が具体的に記録されておらず、右の文書に当たらないことは明白である。

(二) 債権者たる会合の場所を公開した場合でも、出席者名、懇談の内容が知れることはないから、信頼関係が失われたりしない。

(三) 購読料、広告料を協賛金として支出することは有利な記事を書いてくれる相手方に「事前運動費」として支出していることにつながるから、公職選挙法で禁止された違法な行為であり、本号に該当しない。

購読料名目で支払われている金銭が「贈与」か「寄付」であるというのであれば、社会的に一定限度で容認されている冠婚葬祭にかかわる祝金や香典としての範囲で支出するか、法が定める寄附金、補助金として会計支出しなければならない。また、市長の相手方への評価に基づき適宜上乗せして支払うというのであれば、新聞を公費で買収していることにほかならず不当である。

(四) 広告費を支出するならば、広告目的と効果、その必要性が吟味されていなければならない。

第三争点に対する判断

一  交際相手の氏名について

1  本件条例六条二号は、個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るものを公開しないことができると定めるが、これは市が有する私人の情報のうち私事に関する事柄がみだりに他人に知られることのないようにすることを目的とするものと解される。

2  ところで、市長の交際は、それが市長の職務としてされるものであっても、私人である相手方にとっては、私的な事柄といわなければならない。そして、交際相手の氏名を公開すると交際に関する事実を他人に知られることになるが、通常交際の相手方となった私人としては、そのような事実を他人に知られたくないと欲するものと思料され、そのことは正当であって保護されるべきである。そうすると、このような情報は、その交際の性質、内容等からして、交際内容等が一般に公表、披露されることがもともと予定されており、私事に関する事柄をみだりに公開することにならないものを除いては、同条同号に該当するというべきである。

3  これを本件についてみると、市長の交際相手の氏名は個人に関する情報で、公表、披露されることがもともと予定されているものであるとはいえないから、本件条例六条二号本文の情報に該当するといえる。そうすると、右の情報が同条但書の除外事由に該当するかどうかが問題となるが、本件各情報がこのいずれにも当たらないことは明らかである。

二  債権者の印影、振込先について

1  本件条例六条三号は、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報で、当該法人等又は当該事業を営む個人の事業活動上の利益を害するものは公開しないことができる旨定めるが、これは法人等又は事業を営む個人に与える不利益を防止する観点から一定の場合を除き公開しないことができるとしたものと解される。

2  法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報のうち、生産技術上、販売上又は営業上のノウハウに関する情報など一般に競争の分野としてとらえられる情報、経営方針、財務管理、労務管理に関する情報、社会的評価又は社会的活動の自由等が損なわれると認められる情報など、競争上、内部管理上、信用上等の支障を生じさせることが明らかであると認められるものは、本来外部に公開することを予定しないものであり、公開することにより法人等又は事業を営む個人に不利益を与えることになるといえ、これらの情報は公開しないことができるものといわなければならない。

3  これを本件について検討すると、債権者の印影及び振込先は、もともと外部に公開して使用することも予定されている情報といえ、一般に競争の分野としてとらえられる情報、経営方針、財務管理、労務管理に関する情報、社会的評価又は社会的活動の自由等が損なわれると認められる情報等に当たらず、競争上、内部管理上、信用上等の支障を生じさせるものであるとはいえないし、その他法人等又は事業を営む個人に不利益を与えることになる情報とは認められないから、これらは本件条例六条三号に定める公開しないことができる情報には当たらないものというべきである。

被告は、債権者の印影や振込先を公開すると営業妨害や印影の偽造等の問題が生じる可能性もあると主張するが、市長の交際に利用されたということによって営業を妨害されることになるとはいえないし、仮にそのようなことがあるとしても、同条同号の趣旨からして、そのことが同条同号によって右情報を公開しないことができる理由になるとはいえない。また、印影を公開したとしても、そのことが直ちに偽造行為の誘因となるものとは考え難いし、印影は一般に公開されているものであるから、偽造行為に利用されたとしてもそれは公開したためであるとはいえないのであって、公開しないものとする理由にはならない。

三  接客業者で懇談の場所を明示することになる債権者の住所、氏名について

1  本件条例六条九号は、市等が行う事務又は事業に関する情報で、当該事務又は事業の公正又は円滑な執行を著しく困難にするおそれのあるものを公開しないことができると定めるが、これは、事務又は事業の性質上、公開しないことにより当該事務又は事業、又は同種の事務又は事業の公正かつ円滑な執行を確保するという観点から設けられたものであると解される。

2  市長の交際事務は相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われるものであるから、相手方の氏名等の公表、披露が当然予定されているような場合等は別として、相手方を識別し得るような文書の公開によって相手方の氏名等が明らかにされることになれば、相手方に不快、不信の感情を抱かせ、また、不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。そのような事態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるというべきである。さらに、交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、市長においても前記のような事態が生ずることを懸念して、必要な交際費の支出を差し控え、あるいはその支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ、市長の交際事務を適切に行うことに支障を及ぼすおそれがあるといわなければならない。そうすると、交際の相手方を識別し得るような情報は、公表、披露することが当然予定されており右のようなおそれがあるとは認められないような場合は別として、同条同号に該当するというべきである。そして、市の有する他の情報や一般人が通常入手し得る関連情報と照合することによって懇談の相手方が識別され得ることも当然に予想されるところであるから、交際相手の氏名そのものに限らず、これを推知させることになる情報に関しても公開しないことができるものと考えなければならない。

3  これを本件について考えると、接客業者で懇談の場所を明示することとなる債権者の住所、氏名は、他の関連情報と照合することによって交際相手方が識別され得るものであり、外部に公表、披露されることがもともと予定されており公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものとはいえないから、本件条例六条九号に定める市が行う事務に関する情報であって、その性質上、公開することにより当該事務の公正又は円滑な執行を著しく困難にするおそれのあるものに該当するから、公開しないことができるものといわなければならない。

四  購読料、広告料に関する債権者の住所、氏名について

1  本件条例六条九号の規定及びその趣旨は前述のとおりであり、また、市長の交際事務の目的及び右目的からして交際相手の氏名及びこれを推知させることになる情報は公開しないことができるものと解すべきことも前述のとおりである。

2  市長の交際事務は相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われるものというべきことは前述のとおりである。ところで、購読料、広告料は新聞等の購入の対価、新聞等に広告を掲載する代金であって、そのような支出が相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われるものとは認められないから、市長の交際事務に関するものとはいえず、したがって、本件条例六条九号によって公開しないことができるものと解することはできない。

被告は、交際費名目で支払われる購読料については、協賛金的性格を有している旨主張するが、右のような購読料、広告料の性質からして、その支出が協賛金的性格を有するものと認めることはできない。また、特定の新聞社等のみに広報活動の一端を期待して購読料が支払われることは不合理であるし、定められた広告料を支払って広報として掲載することができるのであるから、被告の主張するような基準で金銭を支払うことに合理的理由は認められない。

第四結論

以上によれば、原告の本件請求のうち、債権者の印影及び振込先並びに購読料、広告料に関する債権者の住所、氏名については理由があるから本件処分を取り消し、その余の請求については理由がないから棄却することとする。

(裁判官 朴木俊彦 近藤壽邦 善元貞彦)

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